
内閣総理大臣 安倍 晋三 殿: 象牙の闇。日本の象牙流通と商取引の廃止を求めます。
今、アフリカでは、15分に1頭の象が殺されていると言われています。
1年間に25,000~35,000頭の象が密猟者によって殺されています。
「なぜ、これほどの数の象が殺されて続けているのでしょうか?」
今から28年前、象牙取引はワシントン条約で禁止されました。
採っても売れない象牙の密猟は、一旦、沈静化へと向かう動きがありました。
ところが、それから9年後の1998年、日本と中国は合法で採取した象牙に限り、取引を再開しました。
これを機に、象の乱獲が始まりました。
乱獲は、合法象牙の中に、違法象牙が簡単に入り込める「穴らだけの規制」に原因があります。
象牙を輸入する日本では、「これは28年前より以前に採られた象牙です」と業者が申請すれば、嘘の登録証がさほど難しくなく作成できるといわれています。
甘い規制が違法取引を野放しにしているのです。
私たち消費者は、善良な象牙取引業者も、悪質な業者も、区別することはできません。
象牙販売が禁止されていない日本では、ネット上で今も盛んに象牙製品が取引されています。
また、象牙を売るアフリカの国々でも、厳しい取締りができないのが実情です。賄賂が横行し、希少な野生動物の肉が売られている国で、採取された象牙が象を殺して採ったものなのか、自然死の象から採ったものなのか、どれだけ明確にできるのでしょうか?
結局、象牙を買う国も売る国も、密猟者を根こそぎ取り除くことはできないのです。
象牙の合法性など検証できないのです。
そして、ここ数年の調査で、象牙がイスラム過激派のテロリストの資金集めに利用されていることもわかっています。
このような状況下で、再び開始させた合法取引という「表門」から、かつては、象牙の最大需要国であった日本と、経済成長とともに著しく需要を伸ばした中国に向け、大量の違法象牙が送り込まれるようになったのです。
この問題を重く受け止め、アメリカは、2016年に象牙の取引を全面的に禁止にしました。
これに続き、今年3月からは、最大需要国になった中国も取引を禁止します。
取引禁止は、生態系の保全だけではなく、テロリストの資金源を断つために決定されました。
象は、発情期以外の期間は、メスを中心に、群れで暮らします。メスは15歳、オスは25歳でようやく一人前になり、メスは子象を生むことができます。子象は10年もの間、群れの中で母親に守られて育ちます。長く生き抜いたメスの象は、水飲み場、危険な場所を教える群れのガイド役を担います。象が群れで暮らすのは厳しい環境を生き抜くための知恵なのです。大人の象が殺されれば、群れはたちまち危険にさらされます。
象たちを守るため、1000人のレンジャーがこれまで密猟者との戦いで命を落としています。
テロリストとつながる密猟者は、毒薬と、最新の武器、携帯電話を使ってお互いの利益のために象を殺します。
日本に入る象牙の半数以上が印鑑として消費されます。他には、三味線のバチ、琴の爪などにも象牙が使われています。21世紀の今、文化や装飾品のために象やサイを殺さずとも、技術の進歩によるすぐれた人工象牙で対応できるはずであり、私たちは、そうすべき時代の中にいます。
一度、合法な象牙取引が許されれば、違法な象牙が市場に入り込む流れをつくることになります。
この10年間にアフリカでは、14万4000頭の象を失っています。2010年の日本での象牙取引数は500本。4年後には1900本。象はこのままいけば、20年後には絶滅されるといわれています。
アメリカも中国も取引を禁止する中で、日本は、国際社会の一員としての倫理観と責任を問われています。
「需要」を通し、日本は今も象やサイの密猟と関わっています。密猟者とのつながりを断ち切るため、象牙製品の日本市場での一切の流通と商取引の廃止を求めます。